トークの中身:暗い部屋・板戸の穴・縦長の帯⑧⑨、長さが幅の約5倍⑧。
このページは、ニュートンの3つの発見のうち1つ目(光の分解)です。2つ目は「万有引力と運動の3法則」、3つ目は「微積分」のページにあります。
- ①光の分解(プリズムで白い光を色に分けた)このページ
- ②万有引力と運動の3法則(リンゴと月を同じ法則で説明した)
- ③微積分(「変化」を書く言葉を作った)
白い光をプリズムに通すと、色が出てくる。それは「プリズムが光に色をつけた」のか、「白い光にもともと色が入っていた」のか。
ニュートンは、どうやって見分けたのか?
WHEN | 時代背景大火のあとの江戸、ペストと大火のロンドン
ニュートンが光の実験を始めたのは1660年代の後半です。ロンドンではペストが流行し、記録に残る死者だけで約6万8千人。翌年には大火が街を焼きました⑲。その少し前、江戸も明暦の大火で街の大半を失っています⑳。東と西で、大きな都が焼けた時代でした。
光の研究がイングランドで一冊の本になった1704年、日本では西洋の本の輸入がまだ厳しく制限されていました。キリスト教に関係のない本に限って扉が開くのは、その16年後です㉒。
では、暗い部屋でプリズムを回していた青年は、どんな人生を歩んだのか?
WHO | 挑戦者農家の少年から、造幣局の長官へ
父は彼が生まれる前に亡くなり、母は再婚して家を出ました。少年は祖父母のもとで育ちます①。大学では、本を読んで独学で数学を身につけました①。光・重力・微積分の種がそろったのは、ペストで大学が閉まった2年弱です①。後半生は、議員、造幣局の長官、王立協会の会長と、研究室の外の世界でも大きな存在になっていきます①⑤。
主な成果 転落・対立の節目
- ウールスソープ 1643〜1661
- 16430歳生まれる。父は誕生前に死去①
- 1645ごろ2歳母が再婚し、祖父母に預けられる①
- 1655ごろ12歳グランサムの寄宿学校へ①
- ケンブリッジ 1661〜1696
- 166118歳トリニティ・カレッジに入学①
- 166421歳デカルトやウォリスの本で、数学を独学①
- 1665〜6722〜24歳ペストで大学が閉鎖。実家で過ごす(驚異の年)①成果
- 166825歳鏡を使う反射望遠鏡を自作②成果
- 166926歳ルーカス教授職に就く①
- 167229歳王立協会フェローに。光の論文を発表②成果
- 168744歳『プリンキピア』を出版①④成果
- 168946歳名誉革命のあとの議会に、大学の代表として選ばれる⑤
- 169350歳心身の不調。友人に疑いをぶつける手紙を書き、のちに詫びる⑥転落
- ロンドン 1696〜1727
- 169653歳造幣局の監事に(1699年に長官)①
- 170360歳王立協会の会長に(亡くなるまで)①
- 170461歳『光学』を出版①成果
- 170562歳アン女王からナイト爵を授かる①
- 171269歳ライプニッツとの微積分の争いが頂点に①対立
- 172784歳3月、ロンドンで死去①③
では、20代のニュートンは、光について何を見つけたのか?
WHAT | 達成した事起こし「白」の正体を暴いた3つの成果
白い光は、曲がり方の違う色の光が混ざったもの
プリズムで縦長の色の帯に分かれ、レンズで集め直すと白に戻った②⑧。
色は、白い光が変えられて生まれる(デカルト)⑨1色だけ取り出すと、もうそれ以上は分かれない
色ごとの曲がり方は決まっている②⑧。
プリズムが光に色をつける鏡で像を結ぶ望遠鏡
レンズでは色がにじむ(色収差)ので、鏡を使った。これが評価され、1672年1月に王立協会フェローに②。
望遠鏡はレンズで作るもの(ガリレオの望遠鏡もレンズだった)3つはばらばらに見えて、根は1つです。レンズを通すと色がにじむ。そのにじみを避けるために、ニュートンは鏡を使いました②。色を調べた実験が、そのまま道具の工夫になっています。
でも最初は、帯の形が「おかしい」だけでした。その場にいたら、あなたならどう動く?
CROSSROADS | 分かれ道壁の帯が「丸くない」。あなたがその部屋にいたら、どう動く?
1666年のはじめ。暗い部屋。丸い穴から入れた日の光が、プリズムを通って、壁の上で縦に5倍も伸びた色の帯になっている⑧。当時の有力な説では、色は白い光がプリズムを通るあいだに「変えられて」生まれるもの⑨。タップして、その先を見てください。
Aこれまでの説を、そのまま受け取るタップして、その先へ
行動 色はプリズムが光を変えて作ったもの。帯が伸びたのは、穴やプリズムの置き方のせいだろう、と考えて先へ進む
B道具と条件を疑って、試し直す(観察をくり返す)★ ニュートンが最初にしたことタップして、その先へ
行動 ガラスのむら、ガラスの厚さ、穴の大きさなど、「たまたま」の原因を1つずつ変えてみる
史実ニュートンはまず「ガラスのむらや、たまたまの不具合で色が広がったのでは」と疑いました。同じプリズムをもう1つ逆向きに置いて光を元の向きに戻す、ガラスの厚い所と薄い所に通す、窓の穴の大きさを変える。結果は「どれも関係なかった。色の形はどの場合も同じだった」。光の筋がテニスボールのように曲がって進むのでは、とも調べましたが、曲がりは見つかりませんでした⑧
C説のほうを変えて、それを試す実験を組む(仮説と実験)★ ニュートンが次にしたことタップして、その先へ
行動 「白い光は、曲がり方の違う光の混ぜもの」と仮に考え、それが正しいなら起きるはずのことを、実験で確かめる
史実ニュートンはこの道へ進みました。何を組んだかは HOW で⑧
※ ニュートンは、B で「道具のせい」をつぶしてから、C に進みました。A を選んだとしても、それは当時の常識に照らせば自然な判断です。ただ、5倍のずれを問いに変えられるのは、B と C の手順を踏んだときなんです。
HOW | 泥沼の攻略法もしもニュートンが、1672年の論文を学会発表したら
ここからは、ニュートン本人の発表スライド――という設定でどうぞ。中身は1672年の手紙⑧と、その論文の解説⑨だけで組んでいます。
― 質疑応答 ―
質疑応答の中身:フックの批判と細部を認めた手紙⑨、決定実験への批判⑨、波か粒か①⑨。
質問2は、当時の批判者たちが実際に突いた点です。どの2つの仮説を見分けたのかは、はっきりしないと言われました⑨。だからこそ、観測③の「集め直すと白に戻る」が効いてきます。
正しい実験でした。なのになぜ、光の本はなかなか出なかったのか?
DARK SIDE | 失敗と苦悩の記録最初の論文に、すぐ大物の批判が来た
- 16721月反射望遠鏡が評価され、王立協会フェローに②
- 16722月光と色の論文が載る。最初の科学論文②
- 1週間以内フックから最初の批判⑨
- 数か月後細部が足りなかったと認める手紙⑨
- 16762月5日フックへの手紙に「もし私が遠くを見ることができたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからだ」と書く㉑
- 17033月フックが死去⑪
- 1704『光学』を出版①⑪
言われていること「巨人の肩」は、先人への素直な感謝の言葉。
記録に残ることこの一文は、たしかにフックへの手紙にあります。ただ、感謝と読む説と、フックへの皮肉と読む説の両方があり、歴史家のあいだでも決着していません㉑。
ほとんど無名だった青年の最初の論文は、すぐに当時の大物の批判を浴びました⑨。ニュートンは細部の不足を認めつつも、光の研究を一冊の本にするのは、フックが亡くなった翌年まで待ちました①⑪。発見は正しくても、批判にどう向き合うかは、別の難しさだったんです。フックとの対立は、このあと重力をめぐってもう一度起こります(②のページ)。
それでも、この実験は何がそんなにすごかったのか?
WHY | なぜそれが凄かったのか答え:「分ける」と「戻す」の両方で確かめた
分けるだけでなく、取り出して確かめ、集め直して戻したからです。1色だけを取り出してもう一度プリズムに通すと、もう分かれない。分けた色をレンズで集めると、白に戻る。1色でも欠けると、白でなくなる。プリズムが色を「つけた」のなら、こうはなりません。色は、もとから白い光の中に入っていた。ニュートンは、どちらの説がもっともらしいかを言い合うのではなく、説によって結果が分かれる実験を、行きと帰りの両方向で組みました。
感心する前に、形を疑う。次に道具を疑う。それでも消えないずれが残ったときに、はじめて説を疑う。この順番を守ったから、ニュートンは「白は混ぜもの」と言い切れたんです。
― いまの私たちへ ―
「きれい」より「おかしい」を拾う
虹色に感心せず、形の違和感を問いに変えた。
ニュートン:◎混ざっているものは、取り出して確かめ、戻して確かめる
1色だけ抜き出し、全部を集めて白に戻した。
ニュートン:◎「全体の数字は悪くないのに、どこか形がおかしい」。そんな報告書を見たとき、平均の数字で納得していませんか。1つの顧客層、1つの店、1つの週だけを抜き出して見る。そして抜き出した部分を足し戻したとき、ちゃんと全体に戻るかを確かめる。ニュートンが暗い部屋でやったのは、たぶんそういうことなんです。
- 分かったこと:白い光は、色の光の混ぜもの。色は、光がもともと持っている性質。
- でも、分かったら次の謎が生まれた:では、その光の正体は何なのか? 波なのか、粒なのか。
波だと決まったはずの光が、今度はかたまりとしての顔を見せた。この謎から量子論が育ちます。量子論は実験とたいへんよく合い、いまの物理の柱になりました。それでも、それが世界について何を語っているのかについては、物理学者や哲学者のあいだで今も合意がありません⑮。光をめぐる問いは、ニュートンの時代から形を変えて、まだ続いているんです。
光の正体は、次の人たちに託されました。
出典
本文の小さな丸数字は、下の番号に対応します。①〜⑦は3ページ共通です。トーク・スライド・質疑応答は出典の事実をもとにした再構成で、本人の発言の引用ではありません。
- ① Stanford Encyclopedia of Philosophy「Isaac Newton」https://plato.stanford.edu/entries/newton/(確認日 2026-09-28・2026-10-08)
- ② Royal Society Publishing「Newton shows the light: a commentary on Newton (1672)」https://royalsocietypublishing.org/rsta/article/373/2039/20140213/114844/Newton-shows-the-light-a-commentary-on-Newton-1672(確認日 2026-09-28)
- ③ The Renaissance Mathematicus「Calendrical confusion or just when did Newton die?」https://thonyc.wordpress.com/2015/03/20/calendrical-confusion-or-just-when-did-newton-die/(旧暦・新暦の確認。確認日 2026-09-30)
- ④ American Physical Society「Sir Isaac Newton's Principia」https://www.aps.org/apsnews/2000/07/isaac-newton-principia(確認日 2026-09-28)
- ⑤ The Newton Project「Newton: The Making of a Politician」https://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/contexts/CNTX00002 / Encyclopaedia Britannica「Glorious Revolution summary」https://www.britannica.com/summary/Glorious-Revolution(確認日 2026-10-08)
- ⑥ The Newton Project「Chapter XVII」(ブルースターの伝記。1693年の不調)https://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/texts/normalized/OTHE00078(確認日 2026-10-08)
- ⑦ Stanford Encyclopedia of Philosophy「William Whewell」https://plato.stanford.edu/entries/whewell/(確認日 2026-10-08)
- ⑧ The Newton Project「A Letter of Mr. Isaac Newton … containing his New Theory about Light and Colors」(1672年の手紙の本文)https://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/texts/normalized/NATP00006(確認日 2026-10-08)
- ⑨ 「Newton shows the light」PubMed Central 版(2と同じ論文。本文の確認に使用)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4360081/(確認日 2026-10-08)
- ⑩ Stanford Encyclopedia of Philosophy「Descartes' Method」(虹の説明)https://plato.stanford.edu/entries/descartes-method/(確認日 2026-10-08)
- ⑪ Wikipedia「Opticks」https://en.wikipedia.org/wiki/Opticks(参考。出版を待った理由は解釈。確認日 2026-10-08)
- ⑫ Wikipedia「Treatise on Light」https://en.wikipedia.org/wiki/Treatise_on_Light(参考。確認日 2026-10-08)
- ⑬ Wikipedia「Young's interference experiment」https://en.wikipedia.org/wiki/Young's_interference_experiment(参考。確認日 2026-10-08)
- ⑭ Revista Mètode「Electromagnetic Unification」https://metode.org/issues/article-revistes/electromagnetic-unification.html(確認日 2026-10-08)
- ⑮ Stanford Encyclopedia of Philosophy「Philosophical Issues in Quantum Theory」https://plato.stanford.edu/entries/qt-issues/(2022-03-23 改訂。確認日 2026-10-08)
- ⑯ TOPCON STORY MEDIA「虹の色を7色とするのは日本だけ!?」https://www.topcon.co.jp/media/others/prism/(2024-04-10。確認日 2026-10-08)
- ⑰ Wikipedia「ROYGBIV」https://en.wikipedia.org/wiki/ROYGBIV(参考。ニュートンが5色から7色にしたこと。確認日 2026-10-08)
- ⑱ HyperPhysics(ジョージア州立大学)「Blue Sky and Rayleigh Scattering」http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/hbase/atmos/blusky.html / Wikipedia「Rayleigh scattering」https://en.wikipedia.org/wiki/Rayleigh_scattering(年の確認・参考。確認日 2026-10-08)
- ⑲ Encyclopaedia Britannica「Great Plague of London」https://www.britannica.com/event/Great-Plague-of-London(検索結果の抜粋)/ Wikipedia「Great Fire of London」https://en.wikipedia.org/wiki/Great_Fire_of_London(参考。確認日 2026-10-08)
- ⑳ 内閣府 防災情報「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書(1657 明暦江戸大火)」https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1657_meireki_edotaika/index.html(確認日 2026-10-08)
- ㉑ Wikipedia「Standing on the shoulders of giants」https://en.wikipedia.org/wiki/Standing_on_the_shoulders_of_giants(参考。解釈は諸説あり。確認日 2026-09-28)
- ㉒ コトバンク「洋書輸入の禁緩和」https://kotobank.jp/word/%E6%B4%8B%E6%9B%B8%E8%BC%B8%E5%85%A5%E3%81%AE%E7%A6%81%E7%B7%A9%E5%92%8C-2130192(確認日 2026-10-08)
- ㉓ MacTutor「James Clerk Maxwell (1831 - 1879)」https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Maxwell/ / MacTutor 年代順索引(Albert Einstein 1879 - 1955)https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/chronological/(生没年。確認日 2026-10-08)
ニュートンの光の研究についてよくある質問
ニュートンはプリズムで何を発見した?
白い光は、曲がり方の違う色の光が混ざったものだ、ということです。1色だけを取り出してもう一度プリズムに通してもそれ以上は分かれず、分けた色をレンズで集め直すと白に戻ることを示しました。1672年に王立協会の雑誌に載った、彼の最初の科学論文です。
ニュートンの「光の分解」とは?
プリズムで白い光を、赤から紫までの色の帯(スペクトル)に分けることです。それまでは、色はプリズムなどを通るときに白い光が変えられて生まれる、と考えられていました。ニュートンは、色は光がもともと持っている性質で、プリズムはそれをより分けているだけだと主張しました。
ニュートンの光の研究から何を学べる?
「きれい」で終わらせず「形がおかしい」に引っかかること、そして混ざっているものを取り出して確かめ、戻して確かめることです。丸いはずの光が縦に伸びていた違和感から、説によって結果が分かれる実験を組み、分けると集めるの両方向で確かめました。
このクエストから得た武器を装備する
「混ざっているものは、取り出して確かめ、戻して確かめる」。
あなたの仕事で、平均や合計だけを見て納得している数字はありますか? どこを1つだけ抜き出して見ますか?