トークの中身:ライプニッツの独立の発見⑨、∫ の書き方⑧⑩、英国はニュートンの記号を使い続けた⑨。
このページは、ニュートンの3つの発見のうち3つ目(微積分)です。1つ目は「光の分解」、2つ目は「万有引力と運動の3法則」のページにあります。
- ①光の分解(プリズムで白い光を色に分けた)
- ②万有引力と運動の3法則(リンゴと月を同じ法則で説明した)
- ③微積分(「変化」を書く言葉を作った)このページ
止まった図形の面積や接線なら、先人たちがそれぞれの工夫で求めていた。でも、刻々と変わる「速さ」や「変化」を、決まった書き方で扱う方法はまだ無かった。
ニュートンは、変化をどうやって数式で書けるようにしたのか?
WHEN | 時代背景イングランドとドイツと江戸で、同じころ数学が動いた
同じ17世紀の後半に、イングランドのニュートン、ドイツのライプニッツ、そして江戸の関孝和が、それぞれ新しい数学を切りひらいていました。関孝和の行列式は、ライプニッツより約10年早かったとされています⑬。関は、円周率や円弧の研究から育った「円理」にも力を注ぎ、のちの和算ではそこから積分や無限級数が扱われるようになりました⑬。
では、大学が閉まった2年弱に、この青年に何が起きていたのか?
WHO | 挑戦者農家の少年から、造幣局の長官へ
父は彼が生まれる前に亡くなり、母は再婚して家を出ました。少年は祖父母のもとで育ちます①。大学では、本を読んで独学で数学を身につけました①。光・重力・微積分の種がそろったのは、ペストで大学が閉まった2年弱です①。後半生は、議員、造幣局の長官、王立協会の会長と、研究室の外の世界でも大きな存在になっていきます①⑤。
主な成果 転落・対立の節目
- ウールスソープ 1643〜1661
- 16430歳生まれる。父は誕生前に死去①
- 1645ごろ2歳母が再婚し、祖父母に預けられる①
- 1655ごろ12歳グランサムの寄宿学校へ①
- ケンブリッジ 1661〜1696
- 166118歳トリニティ・カレッジに入学①
- 166421歳デカルトやウォリスの本で、数学を独学①
- 1665〜6722〜24歳ペストで大学が閉鎖。実家で過ごす(驚異の年)①成果
- 166825歳鏡を使う反射望遠鏡を自作②成果
- 166926歳ルーカス教授職に就く①
- 167229歳王立協会フェローに。光の論文を発表②成果
- 168744歳『プリンキピア』を出版①④成果
- 168946歳名誉革命のあとの議会に、大学の代表として選ばれる⑤
- 169350歳心身の不調。友人に疑いをぶつける手紙を書き、のちに詫びる⑥転落
- ロンドン 1696〜1727
- 169653歳造幣局の監事に(1699年に長官)①
- 170360歳王立協会の会長に(亡くなるまで)①
- 170461歳『光学』を出版①成果
- 170562歳アン女王からナイト爵を授かる①
- 171269歳ライプニッツとの微積分の争いが頂点に①対立
- 172784歳3月、ロンドンで死去①③
本で数学を覚えた20代の青年は、何を作ったのか?
WHAT | 達成した事起こし変化を書くための3つの道具
流れる量と流率
x や y を時間とともに「流れる量」とみて、その速さを「流率」と呼んだ。文字の上に点を打って表した⑧。
変わり続ける量を書く、決まった書き方は無い⑧接線と面積は、逆の操作
距離から速さを出すことと、速さから距離に戻ることは、逆向きの同じ計算。微積分の基本定理を、はっきり述べた⑧。
接線と面積は、別々の問題⑧無限に続く足し算で解く
『無限級数による解析について』。写本で回され、多くの数学者が目にした⑧。
面積や接線は、問題ごとの工夫で解くもの⑧3つとも、書いた年と本になった年が大きく離れています。この「離れ」が、のちにニュートンを一番苦しめることになります。
でも始まりは、1664年、本を読んでいて気づいた小さな食い違いでした。その場にいたら、あなたならどう動く?
CROSSROADS | 分かれ道同じ曲線の話なのに、技がばらばら。あなたがその場にいたら、どう動く?
1664年。ケンブリッジの学生だった21歳。独学で数学の本を読んでいる①。曲線に接線を引く技と、曲線に囲まれた面積を求める技が、別々の本に、別々のやり方で載っている⑧。なのに、どちらも同じ「曲線」の話だ。タップして、その先を見てください。
A別々の問題として、そのまま受け取るタップして、その先へ
行動 接線は接線の技で、面積は面積の技で。アルキメデス以来の取り尽くしの方法や、フェルマーの方法を、問題ごとに使いこなしていく⑧
B本を読み込み、技を集めて並べてみる★ ニュートンがその場でしたことタップして、その先へ
行動 何がすでに解けていて、何が解けていないかを、ノートに書き出して比べる
史実1664年のはじめまでに、ニュートンは独学で数学を始め、オートレッド、ヴィエト、ウォリス、デカルトの本のノートをとっていました①
C見方そのものを変えて、両方を1つの書き方で表せないか試す★ ニュートンが次にしたことタップして、その先へ
行動 曲線のとらえ方を変えて、接線の問題と面積の問題を、同じ言葉で書いてみる
史実ニュートンはこの道へ進み、1666年10月、流率についての小論にまとめました⑧。何を書いたかは HOW で
※ A は、確かな方法を大事にする、当時ごく自然な動き方です。B で違和感の出どころを見定め、C で見方を変える。ニュートンはこの順番で進みました。
HOW | 泥沼の攻略法もしもニュートンが、1666年の小論を学会発表したら
ここからは、ニュートン本人の発表スライド――という設定でどうぞ。中身は微積分の歴史の解説⑧と、ガリレオの落下の法則⑰だけで組んでいます。
― 質疑応答 ―
質疑応答の中身:トリチェリと基本定理⑧、流量と流率⑧。
同じ道具を、同じころ、別の人も作っていた。そのとき何が起きたのか?
DARK SIDE | 失敗と苦悩の記録審判を、当事者が書いた
- 16731月ライプニッツがロンドンを訪れ、王立協会で未完成の計算機を見せる⑲
- 1675ライプニッツが、草稿で ∫ を使い始める⑧⑩
- 167610月24日ニュートンがライプニッツに2通目の手紙を書く。方法の中身は、暗号(アナグラム)「6accdae13eff7i3l9n4o4qrr4s8t12ux」で書いた。ラテン語の文「いくつでも流れる量を含む方程式が与えられたら、流率を求めよ。またその逆も」の、文字の数を並べただけのもの㉑。ライプニッツに届いたのは翌年6月。MacTutor は、この手紙を「礼儀正しい書き方だが、ライプニッツが自分の方法を盗んだと思って書かれたのは明らか」とみている⑲
- 1684ライプニッツが微分の方法を雑誌『学術論叢』に発表⑧⑨
- 1699ごろ〜どちらが先か、の争いに火がつく①⑨
- 1703ニュートン、王立協会の会長に①
- 1712王立協会の調査報告(1713年はじめに刊行)。委員会の名で出たが、中身はニュートン自身が書き、ライプニッツの言い分を聞かずにニュートンを先と認めた⑨
- 1716ライプニッツが死去。ニュートンの先取を認めないまま⑨
- その後英国の数学者はニュートンの記号を使い続け、ライプニッツの記号を使う大陸に後れを取った⑨
言われていることライプニッツは、ニュートンの発見を盗んだ。
記録に残ること現代の多くの科学史家は、2人がそれぞれ独立に微積分を作ったとみています⑨。ニュートンの基礎の着想は1665〜66年で先でしたが、公表はライプニッツの1684年が先でした①⑨。
ニュートンは写本と暗号で中身を伏せ、ライプニッツは雑誌に自分の書き方で出した。そして王立協会の会長が、自分の争いの報告を自分で書いた①⑨。勝ったのはニュートンでした。でもその後、イギリスの数学は大陸に後れを取ります⑨。争いに勝って、道具の広がりで負けたんです。
それでも、ニュートンの微積分は何がそんなにすごかったのか?
WHY | なぜそれが凄かったのか答え:止まった図形の数学に、「時間」を持ちこんだ
変わる量を「時間とともに流れる量」とみて、その速さ(流率)を数式に書けるようにしたからです。さらに、変わり方(接線)を求めることと、積み重ね(面積)を求めることが逆の操作だと言い切りました⑧。問題ごとの工夫だった数学が、「変化」を書く1つの言葉になったんです。
止まった形を測る道具だった数学に、「時間とともに変わる」を持ちこんだ。数学嫌いの入口に見える微積分は、じつは世界の動きを書くための言葉の発明だったんです。
― いまの私たちへ ―
「変わり方」と「積み重ね」を行き来する
接線と面積を、逆の操作として結んだ。
ニュートン:◎作った道具は、人が使える形で出す
写本で回し、本になったのは死後。記号は広まらなかった。
ニュートン:×(ライプニッツ:◎)毎日の売上(変わり方)と、月の累計(積み重ね)。どちらか片方だけを見て判断していませんか。日々の増減を足せば累計になり、累計の傾きが日々の増減になる。そして、いい道具を作ったら、周りが使える書き方で早く出す。ニュートンが勝った争いで失ったのは、たぶんそこなんです。
- 分かったこと:変化と積み重ねは、逆向きの同じ計算。これで「動くもの」を数式で書けるようになった。
- そして、この言葉は次の世代の手で育っていく:自然の法則そのものを、微積分の式で書き直す時代が来ます。
じつはニュートン自身は、『プリンキピア』を流率の記号ではなく、昔ながらの幾何学の形で書きました。その幾何学では、加速度をそれ自体の量として書き表す手段がありませんでした⑪。
②のページで見た「運動の変化は、加えた力に比例する」という文章は、こうして F=ma という式になり、微積分の言葉に置き換わりました。ここから先、物理の法則は「変わり方」を書く式で表され、その式を解けば、いまの状態から先の動きが計算できる。ニュートンとライプニッツが作った言葉は、こうして物理そのものの言葉になっていったんです。
この「変化の言葉」で書かれた法則は、次の人たちに受け継がれていきます。
出典
本文の小さな丸数字は、下の番号に対応します。①〜⑦は3ページ共通です。トーク・スライド・質疑応答は出典の事実をもとにした再構成で、本人の発言の引用ではありません。
- ① Stanford Encyclopedia of Philosophy「Isaac Newton」https://plato.stanford.edu/entries/newton/(確認日 2026-09-28・2026-10-08)
- ② Royal Society Publishing「Newton shows the light: a commentary on Newton (1672)」https://royalsocietypublishing.org/rsta/article/373/2039/20140213/114844/Newton-shows-the-light-a-commentary-on-Newton-1672(確認日 2026-09-28)
- ③ The Renaissance Mathematicus「Calendrical confusion or just when did Newton die?」https://thonyc.wordpress.com/2015/03/20/calendrical-confusion-or-just-when-did-newton-die/(確認日 2026-09-30)
- ④ American Physical Society「Sir Isaac Newton's Principia」https://www.aps.org/apsnews/2000/07/isaac-newton-principia(確認日 2026-09-28)
- ⑤ The Newton Project「Newton: The Making of a Politician」https://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/contexts/CNTX00002 / Encyclopaedia Britannica「Glorious Revolution summary」https://www.britannica.com/summary/Glorious-Revolution(確認日 2026-10-08)
- ⑥ The Newton Project「Chapter XVII」(ブルースターの伝記。1693年の不調)https://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/texts/normalized/OTHE00078(確認日 2026-10-08)
- ⑦ Stanford Encyclopedia of Philosophy「William Whewell」https://plato.stanford.edu/entries/whewell/(確認日 2026-10-08)
- ⑧ MacTutor(セント・アンドルーズ大学)「The rise of calculus」https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/HistTopics/The_rise_of_calculus/(確認日 2026-10-08)
- ⑨ Wikipedia「Leibniz–Newton calculus controversy」https://en.wikipedia.org/wiki/Leibniz%E2%80%93Newton_calculus_controversy(参考・要確認。確認日 2026-09-28・2026-10-08)
- ⑩ Wikipedia「Leibniz's notation」https://en.wikipedia.org/wiki/Leibniz%27s_notation(参考。確認日 2026-10-08)
- ⑪ Stanford Encyclopedia of Philosophy「Newton's Philosophiae Naturalis Principia Mathematica」https://plato.stanford.edu/entries/newton-principia/(確認日 2026-10-08)
- ⑫ コトバンク「発微算法」(デジタル大辞泉・改訂新版 世界大百科事典)https://kotobank.jp/word/%E7%99%BA%E5%BE%AE%E7%AE%97%E6%B3%95-1195962(確認日 2026-10-08)
- ⑬ 大人の科学.net「江戸の科学者列伝 和算の開祖 関孝和」https://otonanokagaku.net/issue/edo/vol3/index04.html(確認日 2026-10-08)
- ⑭ MacTutor「Isaac Barrow」https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Barrow/(確認日 2026-10-08)
- ⑮ Euler Archive(University of the Pacific)「Découverte d'un nouveau principe de mécanique」(E177、1750年発表・1752年刊)https://scholarlycommons.pacific.edu/euler-works/177/(確認日 2026-10-08)
- ⑯ MacTutor「Lagrange Analytical Mechanics」https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Extras/Lagrange_Analytical_Mechanics/(確認日 2026-10-08)
- ⑰ Stanford Encyclopedia of Philosophy「Galileo Galilei」https://plato.stanford.edu/entries/galileo/(確認日 2026-10-08)
- ⑱ Revista Mètode「Electromagnetic Unification」https://metode.org/issues/article-revistes/electromagnetic-unification.html(確認日 2026-10-08)
- ⑲ MacTutor「Gottfried Leibniz」https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Leibniz/(確認日 2026-10-08。∫ の初出の日付は、ここでは1675年11月21日、Wikipedia では10月29日とされ、食い違うため本文では日付を書かない)
- ⑳ UC Davis(数学科の授業の補助資料)「3.5 Leibniz's Fundamental Theorem of Calculus」(教科書の章の抜粋)https://www.math.ucdavis.edu/~temple/MAT21B/SUPPLEMENTARY-ARTICLES/3leibniz.pdf(確認日 2026-10-08)
- ㉑ The Newton Project「An account of the Commercium Epistolicum」https://www.newtonproject.ox.ac.uk/view/texts/normalized/NATP00352 ほか(1676年10月の暗号と、その意味。検索結果の抜粋で確認。確認日 2026-10-08)
- ㉒ MacTutor「James Clerk Maxwell (1831 - 1879)」https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Maxwell/(生没年。確認日 2026-10-08)
ニュートンの微積分についてよくある質問
ニュートンは微積分で何をした?
変わる量を「時間とともに流れる量」とみて、その速さ(流率)を数式で書けるようにしました。さらに、接線を求めることと面積を求めることが逆の操作だという、微積分の基本定理をはっきり述べています。基礎は1665〜66年に着想し、1666年10月に小論にまとめましたが、長く出版しませんでした。
微積分はニュートンとライプニッツのどちらが作った?
現代の多くの科学史家は、2人がそれぞれ独立に作ったとみています。着想はニュートン(1665〜66年)が先、公表はライプニッツ(1684年)が先でした。1712年の王立協会の報告はニュートンを先と認めましたが、その中身を書いたのはニュートン自身です。いま使う ∫ や dx の記号は、ライプニッツの書き方です。
ニュートンの微積分から何を学べる?
「変わり方」と「積み重ね」を行き来して物事を見ること、そして作った道具は人が使える形で早く出すことです。ニュートンは先取権の争いには勝ちましたが、記号が広まらず、その後イギリスの数学は大陸に後れを取りました。いい道具も、使われなければ広がらないんです。
このクエストから得た武器を装備する
「「変わり方」と「積み重ね」を行き来する」。
あなたの仕事で、日々の増減と累計のどちらか片方だけを見て判断している数字はありますか? もう片方を並べると何が見えますか?